人間の癌と同じように癌は非常に動物を苦しめます。
今の医療では限界はありますが、我々は少しでも動物が苦しまずにまた少しでも長くオーナー様と一緒に時間を過ごせるように手助けをしたいと思っております。
癌の治療としては手術、化学療法、放射線療法などが主な治療になりますが、当院では手術、化学療法を行い、癌を持った動物のQOL(生活の質)の改善を目指しております。
また腫瘍専門病院での研修、学会、講習会へ参加し常に新しい情報を取り入れ治療に反映させております。犬の約半数はがんで亡くなり、猫の死因の3分の1ががんである事が疫学調査で明らかになっています。
当施設では根拠に基づいた最先端のがん治療を実践し、1頭でも多くの動物ががんを克服できるように日々努力を続けています。
また、自分の大切な家族ががんを宣告された時には、たとえ完治が望めないケースでもできる限り痛みや苦しみを少なくしてあげたいと願うのは当然の事です。がんの克服を目指すだけでなく、動物とそのご家族の生活の質も重視して診療にあたるように心がけています。
悪性腫瘍(がん)って?
悪性腫瘍という言葉を耳にする事があると思いますが、何?と聞かれても答える事が難しいのではないでしょうか。
悪性腫瘍とは、自分の体の中に存在する細胞が、突然変異をおこし、勝手に過剰増殖する事です。その場にしこりを作るのみでなく、肺、肝臓、脳など全身に転移し、死に至る怖い病気です。
1998年に発表されたデータでは、死因のトップは悪性腫瘍で、犬は47%、猫は32%という結果でした。さらに、ゴールデンレトリバーに関しては、なん56%という値になり、大型犬種の発症が多い事が分かります。
もちろん、米国では大型犬種の飼育頭数が多い事から、日本でこのデーターが当てはまるとは言い切れません。しかしながら、動物の悪性腫瘍はまだわかっていないことが多く、高齢のワンちゃんネコちゃんは特に注意する必要があると思われます。
良性腫瘍と悪性腫瘍の違いは?
細かい話をすると大変なので、一言で言うと遠隔転移をするか、しないかの違いです。
他には、悪性腫瘍は急速に大きくなり、周辺組織にコビリ付く様に、奥へ入り込む様に増殖します。良性腫瘍は、転移はしませんし、大きさは変わらないか、ゆっくりと大きくなります。
しかしながら、急速に大きくなるタイプの良性腫瘍や、出血・化膿してしまい生活するのに困った事が生じてしまったら、いかに良性腫瘍であっても何かしらの対応が必要となることもあります。
治療方法
外科手術
手術と言っても、様々な目的があります。悪性腫瘍を完全に根絶させるため、悪性腫瘍が完全に根絶できなくても、今苦しんでいる事を解消させるため、診断のため、などが挙げられます。
抗がん剤(化学療法)
基本的には、悪性腫瘍の転移を抑えるために使用したり、リンパ腫や白血病といった血液腫瘍に多く用いられます。残念ながら、しこりとして存在する悪性腫瘍に対する効果は乏しいのが現状です。
また、テレビのドラマの様な嘔吐や脱毛といった副作用は、まれですが、やはり、副作用と付き合わなければなりません。ですが、あらかじめ、対応することで症状を最低限におさえることが可能です。
再生療法
上記の2つが腫瘍治療の柱で、当院では基本的にこれらの組み合わせで治療を行っております。そして、その他に第4の治療として近年注目されるCAT療法(活性化自己リンパ球移入療法)に力を入れています。
これは免疫細胞療法とも呼ばれ、生まれつき持っている免疫細胞の力を高めることによって、QOL(生活の質)を上げたり、がんの再発や進行を抑えることを目的とした治療です。
幹細胞療法(脂肪幹細胞療法)
【適応】
椎間板ヘルニア・腎不全・自己免疫性疾患・治りにくい骨折…臓器や骨など様々な細胞に分化する細胞(幹細胞)を増殖させ投与することで、幹細胞が損傷を受けた場所に集まり、抗炎症・組織修復作用を示します。